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讃岐うどん屋の息子と伊勢うどん屋の娘の「うどん版ロミオとジュリエット」か『エスカルゴ兄弟』

津原泰水の新作『エスカルゴ兄弟』、大オススメ、楽しい。

讃岐うどん屋の息子(本作の主人公)と伊勢うどん屋の娘(ソフィー・マルソーそっくり)が繰り広げる「うどん版ロミオとジュリエット」か。
いや、うずまきマニアの写真家にそそのかされてエスカルゴ料理店の新米料理人になって悪戦苦闘する料理店経営小説か。
はたまた新しい家族小説でもあり、出てくる人がいくつもの職種にチャレンジする職業小説でもあり、青春小説でもあり、大エンタテインメントでもあり、ユーモア小説でもある。
もちろん、どのような読み方も自由。

主人公柳楽尚登は、編集者。
若手写真家のところに顔を出してきてと社長に言われ、編集担当になったと思って行ってみると、そこは料理店。
エスカルゴメインのフレンチに改装するのだと話し始める。
「料理人の確保が大変ですね」と言うと、若手写真家は仰け反り「なにを言ってるんだ? 調理するのは君だよ、連日連夜」。
あれよあれよという間に、巻き込まれてしまうが……。
と、ここまでたった26ページ。
最初から最後までハイスピード軽快なテンポで物語が進み、ユニークなキャラクターに笑い、美味いもの描写に腹を刺激され、素敵なセリフに勇気をもらえる。

“薄揚げを切って開いて、中に薄切りのチーズを入れ、それが蕩けるくらいまで弱火で焼いただけ”
さっそく真似して食べてみたよ。美味い。