「子育ては尊いという価値観」を押し付けてないか『ノンママという生き方』
精神科医の香山リカが、[ノンママ]に関する書籍を出版した。[ノンママ]とは子どもを産んでいない女性のことだ。
平成28年2月12日に発売された雑誌『FRaU』3月号掲載のインタビューで、女優の山口智子が「子供を産んで育てる人生を望まない」と明言し、話題を呼んだ。
ネット上では「そういう選択も尊重される世の中になってほしい」「子供を産むだけが人生ではない」など、山口智子に共感する女性が続出した。(参考)
しかし、実際の社会では、ノンママがそうした声をあげにくい雰囲気がある。香山リカは、その理由のひとつに「子育ては尊いことという価値観」があるという。そして、国全体でおこなっている少子化対策はその状況に拍車をかけていると指摘する。
2016年5月1日に放送されたトークバラエティ番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)のいち場面が紹介される。ゲストは安倍首相で、コメンテーターは、松本人志、HKT48の指原莉乃などだ。
番組内で保育園問題について聞かれた安倍首相はこう答えた
「待機児童がゼロになるように3年間で30万人分の保育の受け皿をつくってきました」
「少子化対策は大きな課題。これはみんなの課題です」
それに続き、出産の意志について聞かれた指原莉乃はこう答えた。
「産めれば産めるほど産みますよ。国に貢献したい。からだの限界が来るまで産みます。いまの安倍さんの話を聞いて、私もちゃんと子どもを産んで、しっかりお母さんにならなきゃと思いました」
自身もノンママである香山リカは、ここから「国家的なマインドコントロール」の危険性を指摘している。[ママ]として生きるか[ノンママ]として生きるかを選択するうえで大切なのは、「本当に自分で選択しているのかどうか」であり、そこに行政が干渉すべきではない。
[ママ]として生きる幸せも、[ノンママ]として生きる幸せもきっとある。そもそも、「自分がどう生きたいのか」と問う権利は、女性も男性も関係なく、誰にだってあるはずだ。
本書はドラマ化が決まっている。タイトルは『ノンママ白書』で、東海テレビ・フジテレビ系にて8月13日夜11時40分から放送される。主演は鈴木保奈美だ。