2016.07.28
「コミュ障」は改善できる。対人コミュニケーションに効くベスト10冊
アメリカでは大統領候補が、東京では都知事候補が声を張り上げている。
大声を出せば人は振り向く。でも中身が無ければ再びそっぽを向かれてしまう。
人に声を届けるのは難しい。大勢の人の前で話す、2人きりで話す、複数人で会話を回す、それぞれ違うスキルが求められる。
ならばまとめて面倒をみてしまおう。対人コミュニケーションに効く10冊を集めた。精神論は全くない。「アンカリング」「ロゴス」「分人」など、必殺技の名前のような技法を身につけ、「コミュ障」を克服しよう。
◆パトリック・ハーラン『大統領の演説』
アメリカの大統領選は、ほぼ共和党と民主党の一騎打ち。僅差で当選するほど、約半数の国民は他の候補に投票したことになる。大統領の就任演説は、人種や民族がバラバラな国民全員の一つにする超高難度ミッションなのだ。
本書ではケネディ、レーガン、オバマなど歴代大統領の名スピーチを分析し、「エトス」「パトス」「ロゴス」の3つの技法を読者に伝授する。著者はお笑いコンビ・パックンマックンの「パックン」(ハーバード大卒)。次期大統領候補ヒラリー&トランプの「悪い例」も収録。『ツカむ!話術』もおすすめ。
◆山田ズーニー『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
「ついに宇宙とコンタクト」(日本経済新聞)
「ついに宇宙とコンタクト」(東京スポーツ)
同じ内容の見出しだが、誰が言うかで印象が異なる。いくら小手先の言葉をこねくり回しても、信頼や共感が無いと正しく伝わらない。本書はなぜ伝わらないかを解説し、伝えるためのステップを一段ずつ踏んでいく。著者はベネッセで小論文講座の編集に携わり、「ほぼ日刊イトイ新聞」でも連載をもつ山田ズーニー。そのノウハウを全て詰め込んだ一冊。
◆池上彰 『わかりやすく〈伝える〉技術』
わかりやすさ日本代表の池上さんを忘れるわけにはいかない。池上さんが物事を伝えるスタート地点は「図解」。道筋をイメージさせるよう話し、原稿も内容を図解をしてから書き直す。かつてNHK『週刊こどもニュース』で模型を使ったニュース解説をしたことが「わかりやすさ」の糧。分かりにくいニュースに「『こうした中でというのは、どうした中なんだよ』と突っ込みたくなります」など、時折黒い池上さんも顔を出す。
◆吉田尚記『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』
ニッポン放送のアナウンサー、「よっぴー」こと吉田尚記は自分をコミュ障だと言う。だからこそ悩み、分析し、失敗し、ノウハウを溜めた。コミュ障を克服するのは「明るく振る舞おう」などの精神論ではなく、あくまで技術。会話を“チームプレイ”と捉え、パスをどう回すかを考える。できなかった人ができるようになったノウハウは説得力が違う。
◆阿川佐和子『聞く力 心をひらく35のヒント』
ライター業として取材やインタビューをすることがあるのだけど、直前までとても緊張する。でも、20年間で1000人近くと対談した阿川さんでもインタビューの前は緊張するという。なんだそれでも緊張するんじゃないか、と、これだけも安心する一冊。デーモン小暮閣下に「ヘビメタってなんですか?」と直接聞いちゃうなど、インタビュー裏話が楽しい。
◆吉田豪 『聞き出す力』
阿川さんが「白」インタビュアーなら、「黒」に相当するのが吉田豪。“プロインタビュアー”を名乗り、とことん下調べをして、ギリギリの話を引き出す。『聞く力』同様にエピソード集の形をとった本書からは、ギリギリゆえの肝が冷える体験だけでなく、「取材相手を好きになる」「はじめに大きすぎる質問をしない」など現場で得たインタビューのノウハウも学べる。
◆瀧本哲史『武器としての交渉思考』
「交渉」という言葉はちょっと怖い。相手にYESと言わせなくては、反対に丸め込まれぬようにしなくてはと不安になる。しかし本当の交渉はパイを奪い合うのではなく、相手と自分の利害を分析して調整すること。大声で恫喝などもってのほか。合理的にクールに進めるため「バトナ」「ゾーパ」「アンカリング」などの技法を学ぼう。
◆平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』
企業が就活生に求める資質第1位「コミュニケーション能力」。しかし「自分の意見をしっかり言う」「周りの意見に自分を合わせる」という相反する力が「コミュニケーション能力」としてくくられている。では「コミュニケーション」とはそもそもなんなのか。会話の冗長率、「会話」と「対話」の違い、知らない人に話しかけられないのはなぜかなど、平田オリザがコミュニケーションのモヤモヤを解く。
◆平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』
家と学校でキャラが違う、友人とは饒舌だけど職場で無口、2人きりで会うときは別人のよう……。コミュニティによって変わってしまう自分に戸惑うことがある。しかし、これは「個人」や「本当の自分」がただ1つと思っているから生じる歪み。平野啓一郎は、小さな自分がたくさんいる「分人」という考え方を導入する。「キャラ」に縛られる人が楽になる薬。
◆林 雄司『世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書』
PCでメールを返すとき「iPhoneから送信」と再度に入れると出先っぽさが出る。「すいませn」とわざと打ち間違えることで慌てている感を出す。ご存知「デイリーポータルZ」編集長による脱力系コミュニケーション術も覚えておきたい。「Twitterに不満を書かない」などネットで機嫌よくいる方法も収録。
読めば誰かと話したくなるはず。他にもおすすめの本があったら、ぜひTwitter #脱コミュ障本 で教えてください。