「Ring of Fortune」佐々木恵梨「わたしを救った一冊の本」インタビュー2

デビューのチャンスを落ち着いて受け止め、音楽への取り組みにも「物語」というしっかりしたキーワードで答える佐々木恵梨。彼女の世界観を形成しているものはなんだろう。愛読書から探っていく後編は驚きの展開に。前篇はこちら

帰りの電車の中で泣きながら読んで

前編で「辛いことがあったときは音楽と読書にも助けられてきた」と言われてましたが、佐々木さんのお薦め本を教えてください。

佐々木 : 尾崎里美さんの「ちっちゃいおっちゃん」です。

Kindle版ですね。

佐々木 : 単行本も持ってるんですけど、あまりにしょっちゅう皆に薦めるので、友だちに貸したままになってて。デビューの少し前、レッスンを本格的に始めた頃、ボイス・トレーニングの先生に「体がすごく縮こまってます」って言われて。腹式呼吸ができてない、そもそも呼吸が浅くなってる、と。そこで整体に行くように勧められました。

そんな辛いことが。

佐々木 : そしたら整体の先生が、あなたの体のトラブルの原因はストレスだ、しかも、そのストレスの自覚すらない深刻なレベルですと。それで薦めてくれたのがこの本。ストレスセラピーの考え方について書かれています。帰りの電車の中で泣きながら読んで、わたしは今よりもっと自分を好きになれるんだという希望が持てるようになりました。

号泣ですか?

佐々木 : たぶん(笑)。周りはみんな就職しちゃうし、音楽をやりたいなんて、そんな夢みたいなこと言ってないで働きなさいって親にもすごい怒られる。でも音楽が好き、どうしよう、わたしのほうが間違っているのかなって、ぐるぐる考え過ぎることがストレスになっていたのかと。

ストレスを受けたことをちゃんと認める

もともと理屈で割り切りたいタイプだし。

佐々木恵梨

佐々木 : そうそう。「なんなのわたし? なんなのこの現実世界は!」って、答えの出ない問題に圧迫されてた。そういう心の状況が体に影響するんだなって、すごく実感しました。重要なのはストレスを受けたことをちゃんと認めて、負の感情を昇華すること。わたしはそれがまったくできてなかった、自分の感情すら見失い、悩みすぎなんじゃないかと指摘されても「別にそんなふうに思ってないし」って、頑なに重い鎧を着込みつづけていた。

「夢を追いたいけど就職したほうがいいんだろうか」って悩みを持つ人は多いですよね。佐々木さんの場合は、そこにロジカル気質が悪いほうに働いて、体まで壊してしまった。そんな状態を救ってくれたんだから「ちっちゃいおっちゃん」の力は凄い。

佐々木 : 前書きを少し引用すると〈潜在意識を癒すことで自分のパターンが変わり、未来が変わります。つまり、人間の未知なる可能性を開くカギを握るのがちっちゃいおっちゃんなのです〉。そうか、潜在意識のせいなのか、わたしの中のちっちゃいおっちゃんが要らない思い込みやトラウマを沢山抱え込んでいたんだと腑に落ちた。同じころ「あなたは前世で飢え死にしている」と言われたことがあって。

前世!

佐々木 : そう、前世です。そういうのが「見える」という人に言われました。あなたは、とても寒いところで飢え死にをした、だから人一倍恐れや怯えが大きいと。

なんだか説得力あって怖いですね。

佐々木 : でしょう? しかも、ひとりぼっちで死んだと。ただ、一匹の犬だけが一緒にいてくれてたんですって。

ああ、それで(プロフィール資料に「犬好き」とあった)。

佐々木 : はい、犬が大好き。その人のおっしゃるには、人間って生まれ変わる時に、転生の係の人に「前世を忘れるスイッチ」を押してもらうんですって。そうすれば、それまでの悲しい記憶をリセットして生まれてこれる。わたしが過去の不幸にひきずられてしまうのは、そのスイッチをユルく押されてしまったからだと。

ユルく……しっかり押してよ係の人!

佐々木 : 言われて思い返してみると、自分を責めがちというか、肯定するのが下手な性格も災いして、小さいころから自分の本心や、やりたいことを押さえつけてたきたなあと。だけど、過去にひきずられていただけなのかと思えた時に、気持ちがとても楽になりました。

ブロードウェイ女優になりたい

辛いことは辛い、仕方がないこともあると。

佐々木恵梨

佐々木 : もちろん、スピリチュアルなものを信じすぎても、こころのバランスにはよくない。でも、そういうアプローチで世界の仕組みを捉える試みは、生きる上の知恵ですし、物語の力だと思います。

そうか。デビューを冷静に、受け止めることができたのは、その転換があってのことかもしれませんね。過去の呪縛から解かれると同時に、現世の欲からも解放されていたというか……。

佐々木 : 夢は手放してから叶うっていいますしね。解放される前だったら、もっと大騒ぎしてたと思います。デビューという成功体験から1年を経て、これからはもっとふかーいところから出てきた欲を大事にしたいです。

頼もしい。そんな佐々木さんのこれからの野望、目論見は?

佐々木 : もくろみ、もくろみ……。どうだろう、……来世の希望でもいいですか?

来世!(笑)

佐々木 : ブロードウェイ女優になりたいです。

それは、生まれ変わらなくても目指せませんか?

佐々木 : アメリカ人女性として目指したいから(笑)。まあそれは冗談として、音楽的にいちばん影響を受けているアメリカには行ってみたいです。

(構成・文/ヤマダユウス型)

佐々木恵梨のオススメ本






心屋仁之助の作品は全部オススメで、「自分では意識していなかった部分を知ることができた」。最近読んだ本では『アミ小さな宇宙人』に感動。エンターテインメントもよく読み、お気にいりは『殺戮にいたる病』(我孫子武丸)で、「伏線を回収するミステリが好き」やはり、ロジカル気質だ。マンガだったら「やっぱり『ジョジョ』」だそうです(深いトークできそうでした!)
海外ドラマも大好き。休みの日は「hulu」漬けだったり。最近面白かったのは「キャッスル」。その他、「ヒーローズ」「リベンジ」「オーファンブラック」「メンタリスト」「フラッシュ」……つぎつぎとタイトルが飛び出してきました。

アーティストプロフィール

ささき・えり

ささき・えり

シンガー。作詞、作曲も手掛ける27歳。2015年にテレビアニメ「プラスティック・メモリーズ」OPテーマ「Ring of Fortune」で歌手デビュー。
福岡県出身、京都大学総合人間学部卒業。今年10月26日 2ndシングル「Recaling/Last Diary」(PS4/PS Vita「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」OP)発売予定。
海外ドラマ、ミュージカル、犬が大好き。最近は「人狼」にもはまっている。

商品情報

「Recalling/Last Diary」

発売日:2016 年 10 月 26 日
【初回限定YU-NO盤】《凪良描き下ろしデカ帯仕様》品番:FVCG-1392/価格:¥1,500(税抜)
【初回限定プラメモ盤】《動画工房描き下ろしデカ帯仕様》品番:FVCG-1393/価格:¥1,500(税抜)
【通常盤】品番:FVCG-1394/価格:¥1,500(税抜)
発売元:5pb.
販売元:株式会社 KADOKAWA メディアファクトリー
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