オノ・ナツメ「ふたがしら」新作主人公は初の男女コンビ
1963年ロサンザルス。
ダイナーで働くシェリーが、顔全体がヒゲと長髪で覆われたボロボロの男を連れて帰ってきた。
「そのホームレスを店の中に入れる気なら親子の縁を切る」
「ホームレスじゃないわパパ」
世話やきのシェリーが髪を切り、シャワーを浴びさせると、無口な若い男「ロブ」が現れた。
「あの看守アカデミー賞ものだわ」
シェリーは、彼が100年もの刑期を終えた身寄りのない老人と聞いて連れてきたのだ。
しかし、ロブはずっと挙動不審。
テレビに驚き、ニュースに驚き、露出度の高い女性を見て真っ赤になる。
刑務所の清掃員だった男からも
「20年以上前に見たときと変わってない」
と証言され、どんどん謎が深まっていく。
シェリーと会話し、サイドカーで世間を見て回るうちに、ロブから怯えが消えていく。
「あそこ(サイドカー)に座ることは、手綱を持つ君の馬車に乗せてもらうようなもの。男の僕が手綱を握るべきだと思っている」
本来の紳士っぷりが出てくる。
オノ・ナツメ「ふたがしら」(無料試し読み期間中)
の登場人物は、見た目では年齢がわからない。
登場人物同士が見ても、オノ・ナツメのタッチは年齢不詳のようで、ロブは
「すごく若くも見えるし 年上にも感じる…」
と言われている。
きっと見た目年齢は「読者が決めていい」んだと思う。
シェリーが19歳だから、同世代に見えればそれでいいし、いやいや私はおじさまが好きです40代くらいに見えます、と言われればそうとも見える。
彼の正体と、100年の罪を背負うことになった事件とは何なのか。
モノクロの洋画みたいにピシッと締まった世界の中で、ロブはぽつぽつと服役前の出来事を話し始める。