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「ハヤカワ文庫海外SFデジタル化総選挙」エントリー作から必読SF10タイトルを選んでみた

海外SFの老舗・ハヤカワ文庫が未電子書籍化作品を対象にした「電子書籍版復刊総選挙」を開催中。

公式HPより

公式HPより

対象になっているのは、1970年代から2000年代までのハヤカワSF、591作品! この中から投票上位の作品が電子書籍として復刊される。投票期間は8月31日まで。この記事では、特に有名な作品10本を選んでみた(映像化された作品中心)。

ハーラン・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』は、ウルトラヴァイオレンスなSF短編集。『新世紀エヴァンゲリオン』の最終回「世界の中心でアイを叫んだけもの」と片山恭一のベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』の元ネタになった(ただしタイトルだけ)。

小松左京の『エスパイ』は、超能力を持つスパイたちが活躍するアクション(エスパイはエスパー・スパイの略)。ソ連首相暗殺を狙う西側の軍人たちと、それを阻止しようとするエスパイたちの超能力合戦を描く。“本多忠勝”藤岡弘と“真田昌幸”草刈正雄主演で映画化もされている。

フランク・ハーバート『デューン 砂の惑星』は、砂に覆われた惑星“デューン”を舞台に繰り広げられる壮大なドラマ。砂漠を爆走する全長数百メートルの砂虫(サンドワーム)などのイメージは、『スター・ウォーズ』や『漂流教室』、『風の谷のナウシカ』にも影響を与えたと言われている。後にデヴィッド・リンチによって映画化された。


スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』は、20世紀SFを代表するポーランドの作家、スタニスワフ・レムの古典的名作。61年にアンドレイ・タルコフスキーによって映画化された作品も有名(後にジョージ・クルーニー主演でリメイクされた)。意思を持つ巨大な生命体“ソラリスの海”のイメージが圧倒的。

C・L・ムーア『ノースウェスト・スミス 大宇宙の魔女』は、宇宙を舞台に海千山千のアウトロー、ノースウェスト・スミスが活躍するSFファンタジー。なんといっても松本零士の魅惑的な挿画がインパクト抜群。なかでもセクシャルな美女の怪物が登場する短編「シャンブロウ」は世界中の読者を魅了してきた。

A・E・ヴァン・ヴォクト『宇宙船ビーグル号』は、地球の科学者たちを載せた大型宇宙船ビーグル号の冒険を描く。次から次へと乗組員に襲いかかる異生物(BEM)たちとの戦いが読みどころ。収録されている「緋色の不協和音」は映画『エイリアン』の元ネタとされている(ヴォクトが『エイリアン』を訴えた。後に和解)。

ジャック・フィニィ『盗まれた街』は、街の人々が宇宙から来た生命体に乗っ取られてしまうというSFの古典。56年のドン・シーゲル監督版(『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』)ほか、4度も映画化された。最新のものはニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ主演の『インベージョン』(07年)。

フィリップ・K・ディック『ディック作品集』は、スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演で映画化された「マイノリティ・リポート」、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で映画化された『トータル・リコール』の原作「追憶売ります」など7篇を収録。

ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』は、1980年代半ばのサイバーパンク・ブームの代名詞的な作品。「チバシティ」を一躍世界的に有名にした作品でもある。脳の神経とコンピュータ端末をつないで仮想現実の世界へと没入するという物語は、『攻殻機動隊』や『マトリックス』など数多くのフォロワーを生んだ。

J.G.バラー『ハイ-ライズ』は、高層マンションに住む人々が下層階と上層階に分かれて対立し、血みどろの抗争に突入するというSFスリラー。戦いの描き方も半端ではなく、マンションの中で相手を罠にかけて殺し合う。ご存知のとおり、トム・ヒドルストン主演の映画が8月6日から公開される。原作は80年に書かれたもの。SFは古びないんだなぁ。

日本オリジナルの趣向を凝らしたカバーイラストを眺めるだけでも十分楽しい「ハヤカワ文庫海外SFデジタル化総選挙」。上位作品だけと言わず、どんどん電子化してほしいものだ。