桑田真澄は東大野球部に何を残したのか
桑田真澄は元巨人軍のエースだった男。通算173勝をあげ、投手最大の栄誉・沢村賞も受賞経験がある。174cmというプロ野球選手としては大きくはない体格でここまでの成績を積み上げることができたのは、マウンド上で常に「準備」、「実行」、「反省」を絶えず繰り返してきたからなのだ。「考える野球」である。野村克也いわく「これぐらいピッチングのコツを知っている人はいない」という。
そんな桑田は2013年から約2年間東大野球部の特別コーチを務めた。彼らが養ってきた思考力に自らが学んできた知識、培った経験を上乗せすれば、六大学野球でも渡り合えるのではないかと考え、コーチに就任したそうだ。当時の様子が『東大と野球部と私』に書かれている。
東京六大学リーグに所属する、東大を除いた早稲田、慶応、明治、立教、法政は、付属校からの内部進学やスポーツ推薦で入部してくる部員が多い。豪速球、目の前から切れ味鋭い変化球を投げてくるような、プロ注目の選手がたくさんいる。
力対力の勝負ではこれらの大学に勝つことは難しい。桑田が提唱したのは守り勝つ野球。頭を使って練習し、頭を使って試合に臨む。一つ一つのアウトを確実に積み上げていくこと。相手の失投、甘い球を見逃さずに打つこと。これらを実践すれば勝てると考えたのである。
残念ながら桑田がコーチを務めた2年の間には六大学野球で勝利することはかなわなかった。
しかし、2015年5月23日。法政大学に6-4で勝利。2010年より続いた連敗記録を94でストップした。
ちなみに連敗記録というのは六大学野球に限ったうえでの数字。桑田がコーチを務めている間、新人戦で勝利をしているし、旧帝大7校で試合をする「七大戦」では優勝している。桑田のまいた種は着実に育ってきている。