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ヒキコモリ支援センターと4人のヒキコモリの物語『ヒッキーヒッキーシェイク』

『ヒッキーヒッキーシェイク』(津原泰水)は、ヒキコモリ支援センター代表のカウンセラーかつ詐欺師の竺原丈吉と4人のヒキコモリを巡る物語。
第一のミッションは“不気味の谷”を超えたデジタルヒューマンの制作、第二のミッションはUMA(未確認動物)の捏造、そして……。

場当たり的に動いているだけなのか、はたまた深い企みがあるのかさっぱりわからない竺原丈吉がひっかきまわす中、活躍するのはヒキコモリたちなので、まあ、基本的にほとんど出会わない。出会わないままでも物語が進んでいく不思議な小説だ。いや不思議ではない。いまや世界はそうなっているのだ。この原稿だって編集長に会わずに書いている。メールで送ってそして掲載されるだろう。誰にも会わないでできる。

“「だからさ、連中は『家から出られない』んじゃない。同じ人々が集まる一定の場所に「通えない」んだ。少なくとも俺のクライアントには『旅行は好き』って人間がけっこう多い」”

ともかく多彩なアイデアがおしげもなく投入され、つぎつぎと魅力的な登場人物が登場しつづけ(後半になってもどんどん出てくる贅沢さ)、どう展開するのか分からないままノセられて最後にはイマジネーションを解放する場所に連れていかれる。
Jellyfishとも会いたかったし、マルメロとJJの過去エピソードも読みたいし、砂ちゃん芹香ちゃんも見たいし、ジュエル・ビートルズのバンド話も読みたいし、猿飛峡繁盛記も読みたい。

スピンオフ作品が読みたいと熱望する。二次創作好きな人は読むとムズムズしてくるだろう、というか、「作れよ」とメッセージしているんじゃないかと思えるような贅沢に開かれた創りだ
装画は、ビートルズのアルバム『REVOLVER』のジャケットデザインを手がけたクラウス・フォアマン。
おとなしい小説の枠組みを突き抜けたエンターテイメント長篇小説。