変声期の声が裏返って母親の不在が迫る。この切なさを読め『私の少年』
スポーツメーカー勤務の「聡子」と、男子小学生「真修(ましゅう)」
30歳と12歳。
母性と恋の間でつながった2人が描かれる『私の少年』(高野ひと深)。
出会いは、毎晩公園でサッカーの練習をしている真修に、フットサル経験者の聡子がリフティングを見せたことから始まる。
「すごいすごい プロの人ですか」
まっすぐに感激する真修。
女の子と見間違えるような美少年だが、あまり自分からは話さない。
毎晩遅くなっても怒られないというし、服も同じものばかり。
なにか放っておけず、聡子は毎晩練習に付き合うコーチ役になる。
そんな中、同じ部署で働く元彼は、わざわざ新しい婚約者を見せつけてきた。
「応援してますから」
皮肉を込めて言い返したが、会社での虚しい人間関係に、何もかもがどうでもよくなってくる。
毎日練習していた真修も、年下のチームメイトにレギュラーを奪われてしまった。
「俺も応援がんばる」
子どもなりに強がってるのかな。素直に応援できるわけないよな。
そう思いながらこっそり試合を覗いてみると、
「がんばれれえええ」
本当に全力で応援している真修の姿があった。変声期の声が裏返っている。
聡子には、そばにいて一緒に笑ったり、泣いたり、応援してくれる人がいない。
そして真修の身なりや言葉の端々からわかるのは、「母親の不在」だった。