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島本和彦『アオイホノオ』最新刊は、マンガ業界の「あだち化」との闘い

島本和彦『アオイホノオ 15巻』が配信された。

作者の青春時代をもとに描かれた自伝的漫画。
漫画にもアニメにも才能を発揮できず、もがき続ける青年「ホノオ モユル」だったが、ついに新人賞の佳作をゲット。
15巻目にしてプロ漫画家の第一歩を踏み出す!

実際の「少年サンデー82年1,2合併号」の写真を使って、審査員の赤塚不二夫、松本零士、藤子不二雄らのコメントも読める貴重な巻だ。

新人アイドル松本伊代のポスターを貼り、プロだからサインの練習もして…。
次回作のために気力十分なホノオ君だが、彼を阻むのは漫画業界の「あだち化」現象だった。
あだち充の大ブレイクで、時代は硬派な作風よりもフワっとしたラブコメを求めていた。
「可愛いヒロインがいること」が人気漫画の条件になったのだ。

しかしホノオ君(というか、デビュー当時の島本和彦)の絵は松本零士路線。
キリッとした女性は描けても、フワッとした妹系の女の子が描けない。
ホノオ青年は苦悩する。
大事な受賞後1作目に失敗はできない。かといって、あだち充を参考にすればいいのか。流行に乗るよりも、自分らしい作品を描くために漫画家になったんじゃないのか!

「エリア88」の新谷かおるが締め切り日にバイクで逃亡したり、今の島本和彦だからできる「大御所いじり」もいいが、若者の苦悩を描いたシーンはもっといい。
ギャグの中に本音が見える。
俺まで「あだちウイルス」に侵されていいのか!