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「ふたりとも大好きだーーーっ!!」料理を通じて深まる友情『新米姉妹のふたりごはん』4

両親の再婚で、突然姉妹となった高校一年のサチとあやり。快活な姉のサチは、目つきの鋭い妹のあやりに対してちょっとビビリ気味。ところが父親から送られてきた生ハムの原木を見た瞬間、あやりが活き活きと料理をしはじめて───。
ギクシャクした新米姉妹が、料理を通じて仲を深めていくハートフルJK料理マンガ『新米姉妹のふたりごはん』。ちょっと子供っぽいサチと、口下手なあやりの新米姉妹もだいぶ打ち解けてきた4巻。サチの親友である絵梨が、二人の姉妹の輪に加わるエピソードが胸熱です。

過度の人見知りで、緊張すると目がギロッと睨むようなコワモテになってしまうあやり。そんなあやりに最初はガクガクブルブル震えていたサチ。今やあやりの「目ギロッ」が出ると、「美味しい料理を作ってくれるんだ!」と食いしん坊のサチはテンションが上がるほど、二人は仲良しになりました。

そんな様子のサチを気にしているのが、親友の絵梨。幼い頃からずっと面倒を見てきた絵梨にとっては、どんどん妹と親しくなっていくサチを見て、寂しさが募っていきます。3巻で「今年のクリスマスはあやりと過ごす」と言われた時の、刹那の無表情。叔母のみのりだけが絵梨の機微を察するんですよ。うわー切ない。
絵梨は僅かな寂しさと、嫉妬ともいえないもやもやを抱えます。しかし、ここで「サチがあやりに取られた」と負の感情をあやりに向けないのは、人間ができていてナイスです。

バレンタインのチョコを囲んで雑談中の3人に手紙が届きます。内容は、サチたちの両親から「一緒に暮らさないか」とスイス海外移住を持ちかけられる提案でした。絵梨はサチたちと別れることを覚悟。最後の晩餐になるかもしれない海鮮丼に誘われます。その顛末で、あやりが絵梨にかけた言葉。

「絵梨さんは私の初めての…お友達…なので…っ」

顔を真っ赤にしながら、自分の気持ちを必死に伝えるあやりの姿を見て、思わず絵梨の目に涙が。

「ふたりとも大好きだーーーっ!!」

この瞬間、絵梨はあやりを本心から好きになれて、サチと同じくらいあやりを受け入れることができるようになったんでしょう。
ラストの両親へ当てた写真には、あやりの肩をしっかりと抱き寄せる絵梨の姿が写っていて涙を誘います。
あまりの感動エピソードに「これって最終回?」って思った人が多いらしく、後書きでも「これからも続きます」と作者が弁明するくらいの大団円でした。ちなみに今月の『電撃大王』を読んでみたところ、ちゃんと二年生編が掲載されていましたのでご安心を。

もちろん友情ドラマだけじゃありません。料理ネタも健在。4巻ではみぞれ鍋、いちごミルク、フォアグラ、オムライス、海鮮丼が登場します。珍しい食材を使った豪華料理から、王道の手料理、スイーツまで、まんべんなく目で楽しむ料理が堪能できます。また調理シーンもギャグを盛って飽きさせない工夫が良い。サメの皮で作られたおろし器でワサビをおろす時、スポッと皮が抜かれて泣いてるサメの妄想をするコミカルな一面など笑いも十分。清涼な読後感がする、気持ちいい一冊でした。