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スマホで描いた「少年ジャンプ」ルーキー賞受賞作「あなたが恋と言うのなら」の根気と執念

『週刊少年ジャンプ』の矢吹健太朗漫画賞(2016年)で奨励賞を受賞した作品「あなたが恋と言うのなら」が大変話題になっている。

なぜかというと、作者の新人漫画家・あつもりそう氏がこの28ページの漫画をすべてスマホ(iPhone 6s)のお絵かきソフト「メディバンペイント」を使って描いたことが判明したからだ。しかも、タッチペンさえ使わず、すべて指で描いたのだというから驚きだ。

選考した編集部も、まさかスマホで(しかも指で)描いた作品だとはまったく気づいてなかったのだという。なぜ、あつもり氏がスマホを使って漫画を描こうと思ったのかという経緯は、ITmedia NEWS「少年ジャンプルーキー」編集部ブログのインタビュー記事が詳しいのでそちらを参照されたい。「器用としか言いようがない」というコメントがあったが、筆者はそれよりも「根気と執念」がすごいと思う。「とにかく画面が小さくて大変でした」とあつもり氏。そりゃそうだよ!

では、肝心の作品はどうなんだろうか? これが良いのだ。現在は「少年ジャンプルーキー」のサイト全編読むことができる

混じりっけなしの青春ラブコメで、お互いに好き合っている男子と女子が友人のアドバイスを受けて告白しようとするが、相手を呼び出した時間が思いっきり被ってしまい、行き違いになってしまうというお話だ。

登場人物は主人公の男女とその友達2人の計4人のみ。登場人物の数も筋立ても背景もひたすらシンプルなのは、スマホで描いたせいなのかもしれない。だけど、ありがちなギャグに逃げず、恋愛のドキドキとムズムズする感じを非常に上手く表現している。テイスト的にはアニメ『月がきれい』に近い。異能力者もハーレムもグルメも登場しない、こういう題材を今どきの若い人が選ぶのが面白い。

相手を呼び出す手段が「下駄箱に手紙を入れる」って昭和かよ! と思ってしまうが、男子が死にそうな顔で「連絡先なんか知ってたら手紙なんて出さないよ」と言っているので、メールやLINEやSNSなどのツールは増えたけど、好きな相手とは思うように連絡がとれないというのは今も昔も変わらないということなのだろう。

作者のあつもり氏は「読んだ人が少しでも幸せになれたり、前向きになれるような作品を描いていきたい」と語っている。いいこと言うじゃないの。さすがに次作はスマホではなくPCで描くそうだが、あつもり氏の次回作に期待したい。