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「外来種を絶滅させようとするのは危険な思想」生物学者・福岡伸一「週刊文春」でヒアリ騒動を語る

この夏、日本を騒がせた“ヒアリ来襲”騒動。南米原産のヒアリは毒を持ち、刺されるとアルカロイド系の毒によって非常に激しい痛みを感じる。また、毒に対するアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が起きる可能性もある。

ヒアリは外来種に対する恐怖も掻き立てた。とある作家の「日本アリ、頑張れ! ヒアリを撃退せよ! 日本は外来種に対して寛容でありすぎた。そのせいで、大変なことになっている! 外来種と共存なんかできない! 絶対に上陸させてはならない!」というツイートは2000回以上もリツイートされている。

『週刊文春』8月31日号では、『生物と無生物のあいだ』などの著書で知られる生物学者の福岡伸一氏がヒアリ騒動について解説している。

福岡氏はヒアリの脅威はスズメバチほどではないという。日本でスズメバチに刺されて亡くなるのは年間2、30人に上るが、ヒアリはスズメバチのように攻撃的ではないので、こちらかちょっかいをかけなければそれほど危険性はない。

ただし、子どもがヒアリを掴んでしまえば刺される可能性は十分にある。「それは蜂に刺されるのと同じ、経験で学んでいくしかない」と福岡氏。ちなみに福岡氏はスズメバチに刺されて救急搬送された経験があるそうだ。

「蜂に比べたらヒアリは人間に向かって先制攻撃をしかけてくることもないので、マスコミは恐怖をあおりすぎです」と福岡氏はキッパリ言い切っている。そうなのか!

また、日本に入ってきた外来種であるヒアリを絶滅させなければいけないという考え方は「非常に危険な思想」だという。

「要するにすべての固有種と言われているものは結局は外来種なんですよ」と福岡氏。在来種と私たちが思っているものも、かつて外来種としてやってきた生物であり、その種がまた次の外来種によって脅かされてきた。しかし、そこで在来種と外来種の平衡ができ、その繰り返しが生命の歴史なのだという。だから、「在来種を保護して外来種を殲滅しなきゃいけないという考え方は生命にとって無益ですし、かえって危険」なのだ。

単純な話、外来種を殲滅するために殺虫剤を撒けば、在来種までダメージを負うことになる。結果的に生態系に狂いが生じて、さまざまな連鎖が崩壊することになるのだ。

そもそも、タンポポ、ザリガニ、ブラックバスなど、外来種として定着したものも多い。「人間は勝手なもので、良い外来種と、悪い外来種を都合よく区別しちゃってるんです」と福岡氏。すべて人間が勝手な都合を外来種に押し付けているだけなのだ。ヒアリと慣れ親しむことはできないかもしれないが、自然との付き合いはもっと謙虚でいい。

『週刊文春』はKindleでも購入可能。