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天才放射線技師の恋物語って絶対ドラマ化してほしい『ラジエーションハウス』4

レントゲンやCTなど、放射線検査を行う仕事を「放射線技師」と呼ぶ。医師免許は必要ではない。
一方でその写真を見て(読影)診断するのが、「放射線科医」。こっちは医師免許必須。

『ラジエーションハウス』の主人公・五十嵐唯織(いおり)は、医師免許を持っているのに、技師であることにこだわる変わり者だ。
ラジエーションハウス 特設サイト


コミュ障気味で空気が読めない。放射線撮影となると、異様なまでにのめり込む。
彼が「技師」にこだわるのは、幼少期に仲の良かった女の子・甘春杏が、自分は放射線科医になるから、唯織は放射線技師になって私のお手伝いをしてほしい、と言ったからだ。

「放射線技師」という仕事が何をするのか、どのくらい技術が必要なのか。かなり丁寧に描かれている。
技師の仕事は、いうなれば病を写す写真家。撮影の失敗で、病気の発見が遅れることもある。
一方医師の仕事は、受け取った写真にこめられたメッセージを確実に読み取ることだ。
技師がトスをあげて、医師がアタックを撃つようなもの。双方の信頼関係がないと、成立しない。

唯織は、杏ちゃん先生に認められたいこともあって、全身全霊で技師としての技術を磨いてきた。
その結果、普通の検査では映らないような病気をどんどん発見する、天才放射線技師になった。
だが優秀すぎて、序盤の生真面目な杏は彼に嫉妬心がわき、苛立ってしまう。

X線撮影しても見つからず、問題なしと認めていた肩の痛みの原因を、微細な機械の感度調整で写し出す。
乳がんの疑いがあっても見つからなかった女性を、マンモ検査のみならず、様々な技術と知識を駆使して、問題の部位を発見する。
彼は映らなかったはずのものを、どんどん映し出していく。

4巻になると、杏ちゃん先生も唯織の技術が多くの人の命を救っているのを認め、素直に彼に頼り、真摯さと努力に惹かれるようになっている。
人を一人でも救いたい、そのために杏ちゃん先生の力になりたい。自分の利を求めず、まっすぐに挑む唯織の姿は、健気だ。
彼は名声を得ようとしない。「ドクターズドクター(医師のための医師)」として、杏ちゃん先生の、縁の下の力持ちに徹する。

重めな展開が多かった1から3巻に対して、4巻では彼を意識しはじめちゃった杏ちゃん先生をはじめ、同僚や一目惚れの女性らが、唯織に惹かれ始めている。おっとラブコメディ。

地味でシビアな放射線技師の技術話と、真面目男女の不器用な恋物語が、うまいバランスでブレンドされている。テンポが良くて、読みやすい。
ぜひとも、ドラマ化してほしい。
なにより、実写の放射線写真が見てみたい。本物の機器をじっくり見たい。唯織の視野の狭い変質的な天才性や、激ツンデレな杏を演じる俳優が見たい。
テレビ放映されれば、放射線技師の重要性や、なかなか知られていない病気を知るきっかけにもなるはず。